お役立ちコラム

”切らない治療”として注目されているのが「凍結療法」最大の強みは、治療の簡易なところかもしれません。

2022/01/05

乳がんの治療法についてのご紹介です。

乳がんというのは自分で触って見つけることができるがんと言われています。
そのため自己検診を行ったり、健診を定期的に受けることが大切です。
また早期で見つかると10年生存率は96.1%というデータもあります。

ステージⅠ期とはしこりの大きさが2cm以下でリンパ節への転移がないものをいいます。
早期なら治療法の選択肢も広がります。

例えば”切らない治療”として注目されているのが「凍結療法」です。
直径3,4mmの針を患部に刺し、がん細胞を凍らせて破壊する治療法です。
対象となるのはがんの大きさが1.5cm以下でリンパ節転移がない場合です。
体への負担が軽く、傷もほぼ残らない、2006年から304人に実施し、12年間で局所再発したのは3人という結果も出ています。

凍結療法の最大のメリットは体への負担が少ないことです。メスを入れないので乳房に傷はつかず、局所麻酔を用い、日帰りで治療を行うことができます。
また、凍結そのものに痛みを感じにくくする鎮痛作用があるので、ほかの治療よりはるかに痛みが軽くなります。

乳がん患者さんは、発症のピークが40~50代と、ほかのがん患者さんに比べても若く、仕事や育児、介護などで忙しい時期に多いという傾向がみられます。
そこで、日帰りや短期間の入院だけですむ治療ができれば、患者さんのQOL(生活の質)の向上につながります。

凍結療法は、海外では1985年に初めて行われた報告があり、アメリカで1990年代後半から良性のしこりに対して行われるようになっています。
日本では、当院が2006年から試み始めました。まだ臨床試験的に行っている治療であり、再発率や効果についてのデータは十分蓄積されているとはいえないのが実状です。
また治療費も健康保険では認められていないので、自費診療となります。
凍結療法では、凍結させている範囲が超音波画像で明確に確認できるという利点があります。
超音波画像を見ながら治療を進めていきますが、細胞が凍ったところは、黒くはっきりと写し出されます。
凍結部分の真ん中あたりが、もっともがん細胞を破壊する力が強力なので、そこに病変(がん組織)の中心がちょうど重なるようにして、凍結する範囲を調節すればよいことになります。
目で見て確認でき、本来がんがある部分を外して凍らせてしまったり、凍らせ方が十分でなかったりといった問題を防ぐことができます。

●凍結療法の特徴
●傷あとが残らない(3mm程度)
●乳房の形が変わらない
●日帰りで手術ができる(40~50分)
●痛みが少ない(局所麻酔)
◯自費診療(36万円程度)
◯実験的治療段階のためデータが少ない
●凍結療法を受けられる場合
1cm以下の小さな浸潤がん
がんの悪性度が高くない(ルミナルA型)
実験的治療であることを納得している
高齢または全身麻酔に耐えられない、など

この他、がんを熱で死滅させる「ラジオ波焼却療法」という治療も”切らない治療”として現在国立がん研究センターなどで臨床試験が進行中とのことです。
「凍結療法」も「ラジオ波焼却療法」も切らない、傷が残らない、再発が少ないという非常に理想的な治療法ですね。

がんの治療法は日進月歩です。常に最新のがん保険を準備して、それに対応していきたいと思います。