お役立ちコラム
ウイルスを使ってがん細胞を死滅させる療法
おはようございます。本日は「ウイルス療法」についてお話しいたします。
ウイルスを使ってがん細胞を死滅させる療法だそうです。
ウイルスが、がん細胞だけに感染し、がん細胞の中で増殖し、がん細胞を死滅させることができるそうです。この方法によって、正常な細胞は傷つきません。感染・増殖したがん細胞から分泌される物質は、患者さんの免疫細胞によって認識され、がん細胞を攻撃するための免疫を得ることができます。そのため、転移や再発を抑えることが期待されています。臨床試験では、ウイルス療法による治療を受けた患者さんたちの生存率が1年後に8~9割まで向上し、従来の治療法(手術、放射線治療、抗がん剤の組み合わせ治療)と比較して約6倍の生存率という効果が確認されています。現在は、すい臓がんや食道がん、ぼうこうがんなど様々ながんを対象に、企業や大学による研究が進められており、今後、新しいがんに対する効果も期待されています。
ウイルスががんに対して効果的であることは、研究者たちによって昔から知られていました。1971年、悪性リンパ腫に罹った少年が麻疹ウイルスに感染したところ、驚くべきことにがんが消えるという報告もあったとのことです。しかし、ウイルスをがん治療に利用することは、正常な細胞に対して毀滅的影響を及ぼす可能性がありました。そのため、ウイルスの特性を遺伝子組み換えによって変え、がん細胞にのみ効果を発揮するようにすることが課題となりました。この方法によって、がんの新たな治療法を利用することが可能になりました。この治療法の利点は、治療のためのウイルスが血液を通じてがん細胞に移るため、抗体による免疫反応で破壊される可能性が少ないことです。
第一三共が開発したテセルパツレブというお薬が、2021年6月に悪性脳腫瘍治療の新しいウイルス療法として承認されました。2015年から東大医学研究機関で医師主導で治験されてきたそうです。今後7年間は、新薬を投与した全患者のデータを収集し、有効性や安全性を再確認することが条件で承認されました。テセルパツレブは、米国で承認されているウイルス療法薬よりも、がんの攻撃力が大幅に強化されただけでなく、安全性も高くなっています。
新型コロナウイルスによる感染症の拡大とそれに伴う制限により、ウイルスは人間の敵という認識が広がっていますが、がん治療においてはウイルスが人間の味方であることを知ることができ、興味深い現象の一つです。今後、がん患者の苦しみが和らぎ、命を失われる方が少しでも減少することを期待しています。