お役立ちコラム
昨年、大分県臼杵市が九州で初の「認知症条例」を議会で可決 住民の認知症への理解(自分ごと化)が進むことが重要
皆様ご存知の通り要介護となる原因の第一位は認知症です。
昨年、大分県臼杵市が九州で初の「認知症条例」を議会で可決しました。
今回は全国の自治体に徐々に広がりつつある「認知症条例」についてご紹介します。
「認知症条例」は2017年愛知県大府市で全国で初めて制定されました。
これには、2007年に大府市で起こってしまったある事故がきっかけとなっています。
2007年12月、大府市に住む91歳の男性がJR東海道本線大府駅の隣駅である共和駅ホームの端にある階段から線路に立ち入り、走行中の電車に撥ねられて死亡するという事故が起こりました。
男性は長年認知症を患っており、ほんの数分、家族が目を離したすきに一人で出かけて事故にあいました。
当時は、84歳の妻との二人暮らし、デイサービスを利用しながら在宅介護を行っていて、近所に長男の妻が住んで日々の介護を手伝っていました(長男は東京で単身赴任。週末に大府の実家に帰って介護するという生活)。
84歳のときにアルツハイマー型認知症と診断され、物忘れや昼夜の区別がつかなくなる見当識障害はありましたが、食事や排せつ、入浴などは亡くなるまで一人で行っていました。
ただ、外出願望が強く、ちょっと目を離したすきに一人で外出してしまうことが度々あったそうです。
事故から半年後、まだ家族を失った悲しみが癒えないなか、JR東海から事故により生じた金銭的損害の支払いを要求する720万円の損害賠償請求が届きます。
認知症であったことを主張しますが、JR東海は意思判断能力がなかったとしても家族には監督義務者としての責任があるとして2010年名古屋地方裁判所に訴訟を提起します。
2013年8月第一審は被告側の全面敗訴、720万円の全額支払いが命じられ、家族はすぐに控訴し、2014年4月第二審では半額360万円の支払いが命じられます。
すると今度はJR東海側が全額支払いを求めて上告しますが、最高裁は2016年3月、家族側の監督義務を限定的に捉えて、JR東海の請求を全面的に棄却し、家族側の逆転勝訴となりました。
この教訓を踏まえて大府市は2017年11月全国に先駆ける形で自治体独自の「認知症の人にやさしいまちづくり条例」を制定しました。
条例では、認知症に関する施策を総合的に行う自治体の責務、住民や事業者の役割等が定められていますが、大府市では条例制定後、認知症サポーターの養成に力を入れ、人口約9万人に対して約1万6千人の認知症サポーターが存在します。
そうした人が、もし駅のホームから線路に降りようとする高齢者に気づいたら、声かけをしてこのような悲惨な事故が起こらなかったかもしれません。
認知症を患い、出歩き願望のある方を家族だけでケアするには限界があり、地域全体での取り組みが必要であるとしています。
鹿児島でも検討が行われているようですが、早く制定されることを期待したいですね。
しかし、まずは住民の認知症への理解(自分ごと化)が進むことが重要だと思います。
私も、しっかり情報収集をしていこうと思います。