お役立ちコラム
「鬼は外!福は内!」「鬼の目」を閉じるために立ち向かう研究チームは、まさに「鬼滅の刃」の「鬼殺隊」
節分と言えば鬼。鬼と言えば鬼滅の刃(笑)
一昨年は「鬼滅の刃」が大ブームでしたね。
ところで、がん細胞には「鬼の目」があることをご存知でしょうか?
細胞にはDNAを包む核があり、その核の中に小さな目のような形をした核小体がありますが、がん細胞ではこの核小体が「鬼の目」のように恐ろしく異常なまでに大きくなっていることから「鬼の目」と言われているそうです。
この「鬼の目」の現象自体は、1896年にイタリアの研究者が発見し、以前から知られていて、その後の研究により、核小体が大きくなるとリボソームが大量に作られてタンパク質合成が増進する結果、がん細胞が異常な速さで増殖することがわかっていました。
リボソームは「タンパク質製造工場」のようなもので、がん細胞が増えるにはタンパク質、核酸、脂質が必要ですが、なかでも細胞の7割ぐらいを占めるタンパク質が重要となり、リボソームが多ければ多いほど、がんは増殖に必要なタンパク質を手に入れられため、がんは核小体を大きく「鬼の目」にして、リボソームのタンパク質の製造能力を高めているとのことです。
ただ、がん細胞がどのようにして核小体を肥大させ「鬼の目」にするかは約120年間謎に包まれたままでした。
今回(2019年)シンシナティ大学、広島大学、慶応義塾大学を核とした日米英独の4カ国21もの研究機関が協力して最新の技術を駆使し、がんで著しく増大するGTP(グアノシン3リン酸)エネルギーが核小体肥大を引き起こすことを明らかにし、また、GTPエネルギーの産生を遮断すると、がんを抑制できることも明らかにし、がん治療に大きな可能性を開く知見を確立しました。
研究では、悪性脳腫瘍、神経膠芽腫(グリオブラストーマ)のエネルギー産生経路を調べ、悪性脳腫瘍においてGTPの産生が著しく増大していることがわかり、さらに、このGTP産生増加の要因は、がん細胞でイノシン酸脱水素酵素(IMPDH)の量が増えることであるとわかりました。
さらなる代謝解析で、IMPDHにより作られたGTPが核小体でのリボソーム合成に使用されていることを示すデータが得られ、IMPDHがリボソーム合成の増大に重要な役割を果たしていることが判明しました。
そこで、IMPDHを薬で阻害する実験を行ったところ、核小体は小さくなり、グリオブラストーマの増殖が抑制されることが発見され、グリオブラストーマを移植したマウスでIMPDHを抑制する実験でも、腫瘍の進行が顕著に抑えられ、マウスの延命につながったそうです。
IMPDHによるGTP増加が、核小体を肥大化し「鬼の目」にする因子であることを突き止めた本研究は、がんの新たな治療法開発へとつながる画期的な発見だと評価されています。
「鬼の目」を閉じるために立ち向かう研究チームは、まさに「鬼滅の刃」の「鬼殺隊」のようですね。「鬼は外!福は内!」邪気が払われ、皆様に福が訪れますように。