お役立ちコラム
蚊の嗅覚受容体を組み込んだ匂いセンサーを使って、人の呼気に含まれる肝臓がんのバイオマーカーの検出に成功
本日は「蚊の嗅覚」で呼気中の肝臓がんバイオマーカーを検出」についてご紹介いたします。
人工の細胞膜上に蚊の嗅覚受容体を組み込んだ匂いセンサーを使って、人の呼気に含まれる肝臓がんのバイオマーカーの検出に成功したと東大が研究結果を発表しました。
これを応用すれば、呼気から疾病を診断する「呼気診断」を行える可能性があります。
さまざまな匂いを高精度に検出できる生物の嗅覚受容体は、特定の匂いを検知し、その信号を細胞内に取り込むセンサーとして働く膜たんぱく質です。
人や動物、昆虫は、このセンサーを使って匂いをかぎ分け生活に役立てています。例えば、匂いで地雷を見つけるミツバチなどが報告されています。
こうした高感度かつ選択性の高いセンシング能力は、人工的なセンサーでは実現できていないため、生物の嗅覚受容体の機能を利用し、匂いセンサーの研究開発を進めています
今回は、蚊の触角に存在する嗅覚受容体を利用して、人の呼気中に含まれる代謝物を検知できる匂いセンサーを開発しました。
さらに、このセンサーで人の呼気を計測したところ、呼気中に含まれる微量の肝臓がんバイオマーカー「オクテノール」を検出することに成功しました。
この成果から、蚊を始めとしたさまざまな生物の嗅覚受容体を人工細胞膜に再構成させたセンサーによって、複雑な組成を持つ多様な匂いの識別ができる可能性が示唆されています。
将来的には、呼気や体臭によって、がんや糖尿病などの疾病を呼吸診断できるかもしれません。
既に複数の昆虫に関しては、嗅覚受容体が特定の匂い物質を検出できることが分かっています。
例えば、
ミツバチは肺がんやヘロイン、コカイン
ショウジョウバエは肺がんやかび、覚せい剤
ハマダラカは肺がんや人の汗の匂い
をそれぞれ検出できるとされています。
今後はさまざまな嗅覚受容体を使うことで、疾病の診断や環境評価、爆発物検知などに役立つ匂いセンサーの実現を目指しています。
人間や動物、昆虫が備えている嗅覚機能が 最新の化学として人間の疾病診断に役立つとはとても興味深いものです。